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東京地方裁判所 昭和49年(ヨ)6491号 決定

債権者 久保ヒサ

〈ほか三名〉

債権者ら四名代理人弁護士 五十嵐敬喜

債務者 沢登親雄

右代理人弁護士 岡部琢郎

主文

一  債権者らの主位的仮処分申請を却下する。

二  債権者らの予備的仮処分申請に基づき

1  債権者らが金四〇万円の保証を立てることを条件として

(一)  債務者の別紙物件目録(一)の建物に対する占有を解いて、東京地方裁判所執行官に保管させる。執行官は、債務者にその使用を許さなければならない。ただしこの場合においては、執行官は、その保管に係ることを公示するため、適当な方法をとらなければならない。

(二)  右の場合債務者はこの占有を他人に移転し、または、占有名義を変更してはならない。

2  債権者らの予備的仮処分申請中その余の申請を却下する。

三  申請費用はこれを二分し、その一を債権者らの負担とし、その余は債務者の負担とする。

理由

一  被保全権利

昭和四八年九月一八日頃債権者らと債務者間に、債務者は別紙物件目録(二)の建物の北側空地には建物を建築しない旨の合意が成立したところ、債務者が右合意に反して右空地上に建築中の別紙物件目録(一)の建物(以下たんに本件建物という)につき、債権者らが右合意に基づき債務者に対して有する右建物除去請求権。

二  必要性

1  本位的仮処分申請について

本件建物は内装工事を除いて殆ど完成しているところ、仮処分によって直ちにこれが撤去を命ずる必要性に乏しい。

2  予備的仮処分申請について

完成近い家屋の建築の続行を今更禁止したところで、将来家屋収去の本執行の困難さは右建築を完成させた場合とあまり異ならないから、債権者の予備的仮処分申請のうち建築続行禁止を求める部分は保全の必要性がないが、債務者は本件建物完成後他に賃貸する予定でいることが窺われるから予備的申請のうちその余の部分即ち執行官保管債務者使用占有移転禁止を求める部分についてはその必要性がある。

三  結論

1  本位的仮処分申請却下。

2  予備的仮処分申請のうち建築続行禁止を求める部分は却下し、その余を認容。

(裁判官 渡辺剛男)

〈以下省略〉

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